パプアニューギニア活動記

JICA青年海外協力隊 2016年度2次隊 小学校教育隊としてPNG(パプアニューギニア)へ

協力隊活動2016

任地の紹介

投稿日:2016-12-14 更新日:

今回は今住んでいるポポンデッタについて紹介したいと思います。

ポポンデッタについて

概観

ニューギニア島の東に位置するポポンデッタは、人口約2万人でオロ州(北部州)の州都となっています。「オロ」とは現地語で「ようこそ」の意味で、来客などがあると住民は「オロ、オロ!」と歓迎する。私も何度もこの挨拶を受けました。PNGには22の州があり、この州にはアレクサンドラトリバネアゲハという世界最大の蝶が生息する場所としても有名です。オロ州の旗はこの蝶をモチーフにしたものです。学校は把握しているだけでも、小学校(プライマリー)は20校以上、セカンダリーは2校あります。子どもの割合が高いのは途上国の特徴かもしれません。病院は公立病院とクリニックが1つずつあり、薬を含め医療は無料です。しかし、現地の人は病院には殆ど行くことがありません。本当に重症の時のみです。病院は予約制で、突然行っても診察してくれません。病棟も不衛生で冷房はありません。いかに日本の医療制度は充実しているなと思いました。歯医者はポポンデッタにはありません。周りは山に囲まれた典型的な熱帯雨林で、1951年には10km離れたラミントン山が大噴火を起こし、3,000人近い犠牲者を出しました。PNG全体でも言えることなのですが、陸路での他都市への移動はできません。150kmほど離れた首都ポートモレスビーへも飛行機のみとなります。飛行機は平均して首都へ1日2便、ダイビングリゾート地であるトゥフィには週1便運航しています。主食は米で、ココナッツミルクで甘く米を煮込んだものとイモ類をワンプレートで食べる家庭が多いです。

▲オロ州の旗。学校や官公署には必ずこの旗が揚がっています。しかし現地の人も見たことのある人は少なく、「既に絶滅したのでは?」という噂も・・・

物価は安いの?

まず、通貨は「キナ」「トヤ」となります。1キナ=100トヤです。日本円に換算すると1キナ=30円程度です。ちなみに「キナ」とは貝殻という意味で、40年前の独立以前は、まだまだ貝殻(シェルマネー)が取引に使われていた地域が多くありました。現在でも一部の地域で「貝殻○○個で○○トヤ」という買い物ができるところもあります。

日本人の感覚から言えば、物価は安いと言えます。物によっては輸入物なので高いものもあります。野菜や果物は安く、だいたい日本の5分の1~10分の1程度で購入可能です。外資系のスーパーが2件ありますが、マーケットと言う現地の人が出店している市場が1箇所あります。(以前は2箇所でしたが、私が来る前に火事で焼失) そこではスーパーよりも野菜・果物が安く手に入るので、現地の人もよく利用しています。バス(PMVと言います)はポポンデッタから各村に出ていて、たとえば空港に行くためには20分位乗車しますが、5キナ(150円)です。短距離だと60トヤ(約18円)という路線もあります。学校の先生の給与は月に800~1000キナ程度です。卵は12個入りで10キナ。月収の約100分の1です。仮に30万円の月収で例えると、3,000円の卵ということになり、現地の人の給与水準は随分低いということが分かります。飛行機は首都まで往復600キナ、月収が飛んでいくことになります。国内の旅行でさえ一生行けない人が殆どなのです。水道、電気は合わせて1,000円(1か月)もあれば暮らせます。

熱帯雨林は暑いの?

熱帯雨林気候のため、年中気温は高く、昼は30~35℃、夜は25℃~30℃位が普通です。ポポンデッタは11月~4月頃までが「雨季」となり、降水量が多くなります。しかし雨が降るのは夜が中心で、昼間の活動には殆ど支障がありません。雨はパラパラと降ることはなく、集中豪雨のような雨が数時間続きます。同時に雷もほぼ100%鳴ります。南緯9度に位置するので、10月~11月頃と3月~4月頃は太陽の南中高度がほぼ90度で、人の影が見事に真下にできます。たまに昼間に雨が降ると気温があまり上がらないので、夜も涼しいことがあります。それでも23℃位です。しかし熱帯の気候に慣れてくると、23℃は「寒い」です。

それから、パプアニューギニアというと「裸族」のイメージもあるかと思いますが、そんなことはないです。今ではそのような「裸族」を見ることができるのは祭り(シンシン)のみで、それも商業化してきています。独立記念日である9月16日には毎年「ゴロカショー」という国内最大の祭りが開かれ、100以上の民族がシンシンを繰り広げます。(この2年間に一度行ってみようかなと思っています)

▲正午ではないのですが、太陽の位置が高いことが分かる1枚

ポポンデッタの人々

オロ州は仲間の隊員曰く、「22の州の中でもかなりのんびりしている」との印象だそうです。長期的な視野に立って物事を考えることは得意ではないと感じます。ですから教育はもちろん、ビジネスでも(取引先が)相当苦労するであろうなと思います。時間を守ることは皆無と言っていいと思います。「土曜日に学校でパソコン教えてほしい!」と頼まれたので、時間通りに行くと誰もいない。諦めて帰ったら、「(約束の30分後に)ちゃんと来たのに」と言われる始末。先日、椅子と机を買って「午後に持って行くから!」と言われたのに、夜になっても来ない。電話番号も教えておいたのに。諦めて寝ると、次の日の早朝7時に近所の住民が「おーい、起きろ。荷物がトラックで来ているぞ!」と。朝7時に来られるなら前日の夜でも来られたのでは?と思いますが、そこはパプア流。我慢するしかありません。

それから、PNG全体に言えることが「物盗り」が非常に多いということ。これは大人も子供も関係なく、例えば職員室でさえ、携帯電話を置いて1分目を離した隙に盗まれます。「置いてあったから」が彼らの主張で、何でも人が手に持っていないものは「落とし物」という意識が働くらしいのです。教室にあった設置していないホワイトボードも「置いてある」ということで、夜先生が教室のカギを開けて持って帰ってしまうこともあったようです。「そんなの非常識!」と思うかもしれませんが、「すぐに持って帰れる状態にある方がいけない」というのが「持って行く人」の主張なのです。

PNGには「ワントク」という、親戚同士が1つの家で暮らすという慣習があります。そのため、1つの家に10人~20人が住むのは当たり前、しかし働きに出ているのはそのうちの1人~2人のため、日中も音楽を聴いたり談笑したりするなどして過ごしている人がとても多いのです。女性は炊事洗濯が専らの仕事であり、食事を作るとき以外は20人分の洗濯を何回もしています。本当に1日中洗濯しています。洗濯機は使わず、近くの川で洗濯をしています。(私は二層式洗濯機ですが)

風呂は洗濯のついでに川で洗ってくることも多く(ワスワスと言います)、子どもや高齢者は普通に家の外でワスワスしています。隊員間でも「シャワーを浴びる」では長いので、「ワスワスする」と現地語を混ぜながら暮らしています。でも、ワスワスしている近くに浄水場の取水地があるので、そこはちょっと「?」です。水道水はよーく見るとやや茶色いので、飲食には向きません。雨水の方がよっぽどキレイです。PNGの家には大概「雨水タンク」があり(ワラタンと言います。「ワラ」はウォーターです)、それを料理やワスワスに使っています。

教育事情は?

【  】内は日本の学齢

・エレメンタリー(プレ、1年、2年) 【年長、小1、小2】

・プライマリー(3年~8年) 【小3~小6、中1、中2】

・セカンダリー(9年~12年) 【中3~高3】

何歳から学校に行っても構いません。(途中から入ることは不可。全員プレエレメンタリーからスタート) ですから、1年生で14歳、6年生で20歳というケースも珍しくありません。この前、担当の6年生を調べたら、日本と同じ12歳はクラスの3分の1程度しかいませんでした・・・。男女比は1:1です。上級の学校へ進学するには、国の試験をパスしなければならず、セカンダリーに行けるのは10分の1もいません。さらに大学となると狭き門。大学に行けるのは、頭が良くてお金持ちの人しか行けないのです。一生学校に行かない(行けない)子どもも村に行けばたくさんいます。教科書は発行されていますが、日本のように無償ではないので、学校の予算に余裕がないと、先生用1冊のみという学校も少なくありません。(私の学校でも教科書はありませんので、PNGのJICAボランティアが作った数学、理科の教科書を使っています)

予算があるんじゃないの?・・・そうです。予算はあるんです。学校の規模にもよりますが、私の赴任している学校は生徒数600名程で、予算は500万以上はあります。予算を握っているのは校長と事務員で、領収書の提出や年度末の会計もありません。つまり、何に使ってもバレないシステムとなっているのです。学校で唯一車を持っているのは事務員で、彼の給料では到底買えないと思うのですが・・・。

▲PNGの小学校教育隊員が使っている「ハママスブック(数学)」と「パプリカ(理科)」のテキスト。生徒に配布するとすぐに無くすので、私たちが保管。

また思い出した頃に、任地の様子をリポートしたいと思います。

-協力隊活動2016

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